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11月, 2018の投稿を表示しています

真言宗総本山 教王護国寺 東寺の秋のライトアップ

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京都 東寺。 言わずと知れた、世界文化遺産。 真言宗総本山 教王護国寺、弘法大師(空海)の創建でございます。 午前中、京都南ICを下りて洛中に向かう途中に「ライトアップ」という看板を見つけ、帰路に拝観。色付きはじめた落葉樹の向こう側に浮かび上がる東寺の象徴五重塔は幻想的で、木材が黄金色の光彩を放っているようにも見えます。(この記事をアップすることには、紅葉も最盛期かもしれません) 金堂も講堂も公開されていました。 金堂には、薄明かりの中で夜の闇に浮かぶ薬師三尊と薬師如来座像を力強く支える十二神将が鎮座しています。 講堂には、大日如来を中心にして、四隅には多聞天、持国天、増長天・広目天の四天王と、五体の金剛菩薩像、五体の明王像、さらに、梵天と帝釈天が、密教浄土を表現しています。 蝋燭の灯火なら、微風が光を揺らすことにより、仏像の金色に絶妙な動的陰影を与えるのだとおもいますが、明るすぎる夜に慣れてしまった私には光源が電気であっても往時を忍ぶことができているような錯覚を覚えます。(金堂、講堂内は撮影禁止でした。) 灯火の少ない境内を歩きながら、観智院や宝物館も参詣できるのかと思い、歩いてみましたが、さすがにそれらは閉館しておりました。 パンフレットに拠れば、ライトアップは12月上旬までです。何も考えず、準備もせずに、自家用車でアクセスしましたが、駐車場はありました(拝観料とは別料金が必要です)。 地方の自動車利用者には駐車料金と拝観料のダブルパンチですが、わたしは拝観する価値があると思います。

ため池周回ラン

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この二、三日、11月とは思えない陽気です。 久しぶりに自宅近くのため池を周回ラン! 美しい夕焼けでした。 スマホでは眉月を明瞭に撮影することは難しそうです。

峡の劔:第七章 黒衣の旅僧(1)

 数日後の夕刻、松永陣屋の門前に墨染めの布で全身を覆った旅僧が現れる。  弥蔵が旅僧の唇の動きを読み取る。読唇術などの細かい芸当は経験豊富な弥蔵の十八番である。 ―弾正殿に数寄の僧が喫茶しに参ったと伝えよ。  弥蔵が清太の方を振り返って旅僧の言葉を伝える。  松永陣屋には、織田氏の伝令や使者は当然だが、戦陣であるにも係わらず茶の湯を嗜む商人や茶道具を納めに来た商家の手代など様々な人間が出入りする。  清太は「茶」に関して多少の知識はあったが、「茶」を名目に戦場の陣屋に得体の知れない者が多数出入りし、さらに、侘び寂びなどと言いながら、主客のみで小さな部屋に籠って余人を近付けず語り合うことについて、先日の藤佐の件もあり、相当な疑念を抱いている。 「妖怪の類いは夕刻に姿を現すものと相場が決まっています。少し様子を見て参ります。」  冗談交じりに言った弥蔵の影が、松永陣屋の砦柵の向こう側に吸い込まれる。  四半刻ほど経過する。  夕陽が山の端に懸かり、濃い暮色が周囲を支配する。  清太の瞳が、夕闇を突いて陣屋の砦柵を飛び越える弥蔵の影を、捕える。  直後、弥蔵を追跡する形で別の影が砦柵を跳び越える。 ―先刻の旅僧…。  清太は弥蔵の背後にある黒い影を識別する。  弥蔵の軌跡が、清太の潜む樹幹を避けるように右へと緩い円弧を描く。  旅僧が弥蔵を追跡しながら、短く口笛を吹鳴する。尖った高音に反応して、清太の左側、十間ほど離れた位置に、忽然と殺気が湧き上がる。清太は太い樹幹の背後に姿を隠し、杖を握る左手に力を込めながら、右手を懐に入れて小柄を握る。旅僧は一心不乱に疾走している弥蔵との距離を次第に縮める。  清太の左側に湧いた殺気が弥蔵の前方に回り込もうと移動する。弥蔵はその意図を避けるため、進路を左方へ曲げる。  結果的に弥蔵は清太の潜む樹幹の脇を駆け抜ける。  執拗に弥蔵に追い縋る旅僧がその樹幹を通過した刹那、清太が立て続けに二本の小柄を旅僧に投じる。  小柄は旅僧の影に吸い込まれる寸前に、黒衣に弾かれたように失速し、乾いた音を立てて地面に転がる。  清太は剣を抜き、旅僧に襲い掛かる。旅僧は大きく真横に跳び、清太が振り抜く瞬速の太刀筋を躱す。清太は大胆に跳躍して、渾身の斬撃を繰り出す。旅僧は全身を包む黒衣を大きく揺らしながら、後方に跳

峡の劔:第六章 四天王寺(2)

 ほどなく老僧が細長い形状の宝物を収めた綾織の袋を両手で奉戴しながら、金堂を退出する。 ―宝剣…。  亥介達は老僧の手元を凝視する。  その瞬間、老僧は金堂の入口を警護する四人の僧侶を手招き、突然、亥介達を指さす。老僧と亥介達の視線が絡まる。遠くにあるはずの老僧の瞳が二人の視界に大きく広がる。 ―魅入られる。  二人は視線を外して、老僧の瞳から逃れる。しかし、老僧が自分たちを指し示す指先が二人の瞳の中でゆっくりと回転しながら次々と分裂し、二人を妖異の世界へと引き摺り込む。二人の視界が無数の指先に支配される寸前、指は消滅し、微笑を浮かべた老僧の皺顔に変化する。その刹那、僧侶達が次々と半鐘、木鉦、指笛などを鳴らし、寺域全体に侵入者の存在を知らせる。 「嵌められた…。」  総馬が呟く。  老僧は何事もなかったように悠然と中門へ歩いていく。  伽藍内にいる僧兵、僧侶が亥介達の足下に集まり始める。伽藍内の騒擾は外部にも伝播するが、伽藍の外側にいる僧達は侵入者の位置を特定できないまま、いたずらに右往左往している。亥介は背後を振り返って総馬の袖を引き、 ―撤収じゃ。 と、目顔で告げて促す。回廊内の僧侶、僧兵達が篝火を集めて亥介達の姿を求めつつ、老僧が指し示した場所に出鱈目に矢を射込む。回廊外の護衛も回廊内に集まる篝火と矢唸りを頼りに亥介達の足元に集まる。 ―囲まれる。  亥介は回廊の外側に向けて高々と着衣を一枚だけ脱ぎ捨てる。空中に舞った亥介の着衣を賊と誤認した回廊外の護衛達が雄叫びを上げながら、その布切れに無数の矢玉を浴びせる。護衛達の意識を逸らしている間に、亥介と総馬は腹這いのまま素早く屋根の上を移動し、先刻の突風で篝火が消えたままの中門外側にある小さな植込みの闇溜まりに静かに着地し、寺域の騒擾を背中に感じながら、四天王寺をあとにする。  寺域の外に広がる漆黒の闇の向こうを、二人は目を凝らし、先刻の老僧の存在を探る。しかし、闇の向こうには静寂だけが広がっていた。  亥介達は小屋に戻り、清太と弥臓に老僧の妙技を始め四天王寺の中心伽藍で起こった出来事を詳細に報告した。 「伽藍全体に妖術をかけ、宝剣を盗み出し、最後には亥介と総馬の存在を僧兵達に告げて、自分の退去を容易にするとは、心憎いばかりの施術だ。」  亥介と総馬の表情は固い。 「老僧は自分の